田口 冬菜
田口 冬菜

necco Note

2024年に作った10の実績動画から学ぶ!魅力が伝わる動画づくりのポイント5選

  • Motion Design

プロジェクトマネージャー・エディターの田口です。

制作会社の生命線とも言える「制作実績」の公開。neccoでは自社サイトへの掲載に加えて、XやInstagramなどのSNSでもご紹介しています。

そんな実績の紹介投稿には、ほぼ必ず「動画」を使用しています。

上のような実績動画を、今年は10個つくりました。

この記事では、1年間で作った10の動画を振り返ります。作りながら学んだ「魅力が伝わる動画づくりのポイント5選」も紹介するので、最後まで楽しんでいただけるとうれしいです。

クオリティ面にはまだ課題がありますが、作っては学び、改善を重ねてきました。トレンドのBentoレイアウトにも挑戦しました。1年前より、少しはレベルアップしたと思います。

そんな1年のリアルな記録です。ぜひご覧ください!

(この記事は「neccoアドベントカレンダー2024」16日目の記事です🎄)

実績紹介のために動画をつくる理由

プロジェクトの完了後、なぜオリジナルの「動画」をつくって紹介するのでしょう?その理由は3つあります。

  1. 伝えられる情報量は動画>静止画
  2. 興味を惹きやすい(他社との差別化)
  3. 「動画もつくれます」アピール

1. 伝えられる情報量は動画>静止画

動画は静止画よりも多くの情報量を伝えられます。見せたいものを意図した順番で見せられる効果もあり、実績紹介における表現として有効です。

情報の伝達量が多いぶん、動画内のカット数や情報が少ないと、静止画より内容が薄く感じられる場合もあります。単に動画を使えば良いわけではでなく、充実した情報量を詰め込むことと、見るひとを飽きさせない画(え)づくりが重要です。

2. 興味を惹きやすい(他社との差別化)

ひとの目は動くものに反応しやすい性質があります。情報が波のように押しよせるタイムラインで「なんだろう?」と興味を惹くためには、静止画より動画が効果的です。

ただ、多くの制作会社が動画つきで実績を公開している時代です。より興味を持ってもらうためには、さらなる工夫が必要です。具体的な工夫は後述しますが、他社との差別化のためにも、オリジナルの実績動画をつくっています。

3. 動画もつくれます!アピール

動画が納品物に含まれていないプロジェクトでも、実績の紹介用につくって公開することで「動画つくれます!」と間接的にアピールできます。

デザイン会社も動画をつくれるのが当たり前な時代になってきました。新しいお仕事につなげるためにも、自分たちから積極的に「できること」を発信していく必要があると考えています。

2024年に制作した10の実績動画

今年つくった10の動画を振り返ります。それぞれ挑戦したこと、前回から改善したことなどをまとめて紹介します。

1. 「編集者のための〆切手帳」サービスサイト

WORDSさんが開発・販売する「編集者のための〆切手帳」は、クラフト紙のカバーに厚みのある用紙、余白や装飾を削ぎ落とした究極シンプルな手帳です。

写真や動画を使ったサイトでは、質感と雰囲気をリアルに感じられます。印刷のかすれ具合や裏写りしない厚紙、控えめな佇まい、どれもわたしが愛用している〆切手帳そのものです。

実績動画では、写真や動画、手帳の構造を意識したデザインをストレートに見せる構成にしました。過度な動きの編集を追加せず、潔く見せています。手帳の存在感を強く、リアルに感じられるよう、背景に手帳をめくる映像も入れています。

当時の課題は、画面収録動画のカクつきでした。自然なスクロール動画を撮ることができず、動画のクオリティが落ちてしまうことに悩んでいました。

「編集者のための〆切手帳」サービスサイト|制作実績

2. 秋田人形道祖神(追加:神様一覧)

今年、秋田人形道祖神プロジェクト(ANP)さんのウェブサイトに、神様データベースが追加されました。39の個性豊かな神様が一覧できるページです。

自社サイトの実績更新とあわせて、Xでもお知らせするため、動画を用意しました。

既存実績の動画を公開済みだったこともあり、「既存実績の再投稿」と思われないよう注意していました。独特の世界観を表現したメインビジュアルを使いたい。でも、既存実績と勘違いさせては、もったいない。最終的に、初見のかたにも興味を持ってもらえるよう、MVを導入に採用しました。

このころは導入シーンの作りかたに迷っていました。スクロール動画の画面(横長の長方形)をいきなり見せず、インパクトのあるビジュアルを見せたほうが良いかもしれない。表現の幅を広げるためにも、もっと検証が必要だと考えていました。

「秋田人形道祖神プロジェクト」ブランドデザイン・メディアECサイト|制作実績

3. 昭和9年創業「佐野みそ」コーポレートサイト

佐野みそさんの実績動画では、画面スクロール動画の「背景がさみしい問題」に直面しました。やさしい配色と高品質な写真が映えるサイトです。背景に写真を敷くパターンも検討しましたが、やさしく素朴な印象が損なわれてしまいました。

そこで取り入れたのが、サイトで使用しているイラストです。みそのイラストをそっとあしらうことで、与えたい印象を保ちながらも、あそび心がプラスされました。いま思うと、イラストは背景に添えていなければ、スクロール動画のなかで見過ごされていたかもしれません。なんてもったいない!

これまで映像やロゴに頼ってきた背景でしたが、佐野みそさんの動画を境に、イラストやモチーフを取り入れたものにアップデートされていきました。

昭和9年創業「佐野みそ」コーポレートサイト|制作実績

4. 「こども家庭ソーシャルワーカー認定資格」特設サイト

こども家庭ソーシャルワーカー認定資格の動画は、「こどもたちがぴょこぴょこ登場するシーンではじめよう」と決めていました。

これまでに作った実績動画は、サイトのメインビジュアルや映像を大きく見せ、世界観に惹き込む。そんな表現方法に偏っていました。そこで、佐野みそさんの動画づくりから学んだ「イラストを積極的に使う」手法を応用し、こどもたちが元気に動くイラストと動きを取り入れてみました。

導入シーンの背景色が白のため、Xのタイムライン上で目立たないかも。そんな心配も、こどもたちが解消してくれました。青、オレンジ、緑の服を着たこどものイラストを大胆に見せることで、違和感なく、導入シーンに華やかさを持たせることができました。

こどもたちのイラストを使用する際には、デザインのNGパターン「首切り構図」を防ぐことにも気を配りました。

「こども家庭ソーシャルワーカー認定資格」特設サイト

5. EV急速充電サービス「GO Charge」サービスサイト

GO Charge サービスサイトの実績動画は、すでに公開済みの「GXサイト」の紹介動画と区別する必要がありました。先に紹介したANPさんの動画でも悩みましたが、デザインの世界観が同じ場合、「既存実績の再投稿」と思われてしまう可能性があります。

この対策として、動画の構成を変えるとともに、GO Charge用に制作した映像、3DCGオブジェクト、2Dアイコンなどを積極的に取り入れました。

心残りは、PCの画面スクロールシーンが長く、冗長な印象になってしまったことです。1ページのLPサイトのため、上から下までスクロールし、全部見せたい気持ちが出てしまいました。

サイト内で3DCGオブジェクトや映像を活用しているセクションがある。印象は同じにならないかも。ずっとスクロールでも問題ないだろう…。希望的観測もありました。いま見ると、もっと大胆にシーンやレイアウトを切り替えるべきだったと思います。

EV急速充電サービス「GO Charge」サービスサイト|制作実績

6. 心の問題に取り組む企業「Awarefy」ブランドデザイン・コーポレートサイト

Awarefyさんの実績動画づくりで直面した課題は「素材がたくさんある!ありすぎる!どうやってまとめよう!」ということでした。

うれしい悲鳴ではありますが、大規模なリブランディングプロジェクトです。わたしが作る動画のクオリティでは、魅力を伝えきれないかも。でも、みんな、すごくがんばっていた。お客さまとチーム一丸となり、本当に素晴らしい仕事をしていました。

当時だれにも伝えることはなかったですが、プレッシャーと不安、焦りをいっぱいに抱えて動画を作っていました。これはAwarefyさんの実績動画に限ったことではありませんが、ベストを尽くしても足りない。みんなに自分の実力が追いついていない。悔しい。明確な実力不足を実感した時期でした。

実績動画では、いくつかの新しい表現に挑戦しました。

導入シーンでは、一貫したコンセプトを軸に数々の成果物が生まれたことを伝えるキャッチコピーを表示。続けて成果物の全体像が見えるシーンを取り入れることで、その後の期待感を高めました。

ほかにも工夫はありましたが、特にテンポよくシーンを切り替える手法の有効性を、Awarefyさんの実績動画づくりから学びました。

心の問題に取り組む企業「Awarefy」ブランドデザイン・コーポレートサイト|制作実績

7. GO Charge(ver.2)

GO Chargeの実績動画は、今年2つ制作していました。背景には、サービス内容が少し異なる「法人向けLP」と「個人向けLP」、2種類のサイト公開がありました。

先に紹介した「法人向けLP」では、既存サイトのGXサイトと同じ印象になってしまうことに悩みました。もちろん、今回も悩みました。むしろ悩みは増すばかり。GXサイトと区別できる動画でありながら、先んじて公開した法人向けLPとも区別できるものにする必要があります。本当に困りました。

同時にこの時期、とてつもない時間不足でした。ありがたいことに、クライアントワークが忙しすぎました。実績動画の記事を書いていますが、本業は「プロジェクトマネージャー」「エディター」です。わたしの手が止まれば、プロジェクトが止まってしまいます。お客さんにも、neccoのみんなにも、迷惑をかけてしまいます。ただ、実績公開も停滞させてはいけない…。

悩んだ末、シンプルなスクロール動画にしました。悔しいけど、自社の発信よりお客さまのほうが大切です。

当初は個人向けサービスのシーンだけで作るつもりでしたが、せっかくなら、法人LPを見たことがない人にも紹介したい。最終的に、2つのGO ChargeのLPをつなぐ動画にしました。

EV急速充電サービス「GO Charge」サービスサイト|制作実績

8. エネクラウド株式会社 コーポレートサイト・イラスト

エネクラウドさんの動画では、はじめてBentoレイアウトに挑戦しました。Bento=お弁当箱です。見てほしいページやイラストがたくさんあるけど、長い動画は離脱される…。そんな課題を解決してくれたのが、Bentoレイアウトです。

これまで作ってきた動画の多くは、ウェブサイトをスクロールして見せるものがほとんどでした。作り手としては、できるだけ多くのページ、素材を見せたい。でも、ひとつずつ直列で並べていると、動画が長くなる。それでも最後まで見てもらえたらうれしいですが、現実はそんなに甘くありません。すぐに離脱されてしまうでしょう。

これに対して、Bentoレイアウトでは、ひとつのシーンに複数の素材を盛り込めます。見せたいものを多く見せられると同時に、情報の密度が高まり、単調さも回避できます。見る人には満足感を与えられて、いいこと尽くしです。

Awarefyさんの実績動画づくり前後で「悔しい」「早急にレベルアップしないと」という気持ちが煮えたぎっていたこともあり、満を持して、トレンドのBento動画に挑戦しました。実際に作ってみたら、実績動画との相性は抜群でした!

素材準備の大変さ、編集のむずかしさも痛感しました。やっぱりうまくできない。動画の秒数はいつもの半分以下なのに、素材の数は倍増。自然なシーン切り替えやモーフィングなど、編集の工夫も必要でした。制作に費やす時間も自然と長くなります。本当に困りました。

ただ、いつまでも時間をかけてはいられません。お客さまとnecco、みんなで作ったサイトを早くお披露目したい。これまでひとりで作ることが多い実績動画でしたが、これを機に、デザイナーのメンバーに素材づくりを手伝ってもらうようにもなりました。

エネクラウド株式会社 コーポレートサイト・イラスト|制作実績

9.マンガワン10周年サイト

マンガワンさんのお祝いサイトは、ド派手に楽しく!装飾モリモリの華やかな動画にしました。エネクラウドさんの実績動画づくりから学んだBentoの知見を活かして、デザインチームと一緒につくりました。

くす玉がパカッと開いてピンク色の世界が広がる導入シーンは、実際のサイトを画面収録して使っています。いつも迷う動画のオープニングですが、「ここしかない!」と思いました。短い動画は導入がもっとも大事です。冒頭2秒に命をかけるべきだと、本実績を通して確信しました。

動画のなかで何を見せるかは、デザイナーと相談して決めました。作家さんのお祝い色紙や歴史など、見せたいところがたくさんあります。ここでBentoの出番。サイトのスクロール動画やモーションロゴ、かわいいインタラクション、すべて詰め込みました!

インタラクションの動画をBentoに入れるときは、複数ではなく、1つにしぼる。ロゴを置いておくと、お客さまやプロダクトのPRにもなる。Bentoづくりのコツもつかめてきました。

阿部さんやデザインチームからレビューをもらいながら、背景やあしらいも作り込みました。「ふわふわさせたら、かわいいよね!」「立体感があるよね!」「最後に大きくモーションロゴを見せよう!」そんな気軽な意見と会話の積み重ねが、動画のクオリティを上げていきます。

少し前まで実績動画のクオリティが上げられず、悩んでいました。解決方法は本当にシンプルで、もっと頼ればいいだけでした。今後は気兼ねなく手伝ってもらいます!

マンガワン10周年特設サイト|制作実績

10. 「マンガワン」アプリ・サイトのUI/UX リニューアルデザイン

マンガワンのアプリ実績動画には、これまでの知見を盛り込みました。今年の集大成と言っても過言ではありません。

このあと紹介する「動画づくりのポイント」もすべてクリアしています。冒頭2秒で心をつかみ、3秒程度のシーンを次々と展開していく。バトンが次から次へとわたるように、流れるようにシーンを展開する。記憶に残してもらえるように、いろんな感情を詰め込む。24秒間に全力を尽くしました。

制作時間は相変わらず不足していました。でも、いつも合計10時間ほどかかっていたところを、半分の5時間くらいで作れました。たくさん助けてくれたチームのみんなのおかげです。心から感謝してます。ありがとうございます。

もちろん反省もあります。本当はマンガワン10周年サイトと同じ日に実績を公開したかったです。派手にお祝いしたかった。でも、この動画の完成がまにあわず、実績の公開日を調整しました。悔しかったです。自社サイトの実績詳細ページを急いで準備してくれたデザイナーのみんな、言葉のひとつひとつに気を配り、細部までこだわり抜いた阿部さん、ご協力いただいたお客さま、すべてのひとに、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。いま思い出しても悔しいです。

同じ失敗を繰り返さないために、この記事を書こうと思いました。

「マンガワン」アプリ・ウェブサイトの UI / UX リニューアルデザイン|制作実績

魅力を伝える!動画づくりのポイント5選

これまでの実績動画づくりから学んだ、「魅力が伝わる動画づくりのポイント」を紹介します。デザインが重要であることは大前提です。そのうえで、次の5つを意識すると良いでしょう。

  1. 最初の2秒で惹きつける
  2. 1シーンは3秒以内にする
  3. 流れるようにストーリーを展開する
  4. 画質にこだわる
  5. 不要なものをカットする

まだまだ修行中の身ですが、上記のポイントをおさえた動画は、社内レビューで「おーーー!!」と歓声が上がります。YouTubeのショート動画やInstagramのリール動画にも応用できると思います。ぜひお役立てください!

1. 最初の2秒で惹きつける

実績動画を作るうえで特に大切にしたいのが、「冒頭2秒」の表現です。

なんとなくSNSを見ている人の多くは、動画を2秒ほど見て興味があるか判断します。その瞬間に「なんだろう?」と思ってもらえなければ即終了。続きを見てもらえません。

重要な冒頭2秒には、次のような表現が有効です。

  • 素早く大胆な動き
  • 動くイラストや3DCG、映像
  • 情報量の多いカット(Bentoレイアウト)

出し惜しみをせず、映えるシーンを冒頭に持ってくる。目に止まる動きを入れる。これを意識して作っています。以下に3つの例を紹介します。

ドライバー専用の転職サイト「GOジョブ」の動画では、開始1秒でタクシーを走らせています。2秒以内には、サイトのメインビジュアルが浮き上がります。わかりやすく大胆な車の動き、特徴的な配色、記憶に残りやすいグラフィックなど、一瞬で興味を惹くための仕掛けを盛り込んでいます。

マンガワン10周年のお祝いサイト動画では、ロゴで視線を惹きつけたあと、くす玉が開き、MVと豪華な背景が広がります。素早い展開とワクワク感が高まる演出にしました。ひとつ先の展開への期待感は「間」を長めに取り入れることで表現しました。

マンガワンのアプリ動画では、開始1秒でBentoレイアウトを展開しています。情報量の多さで惹きつけると同時に、アプリに関する実績であることを印象づけています。

2. 1シーンは3秒以内にする

情報量が充実した動画は、最後まで見てもらえる可能性が高まります。その反面、画面数が少ない、変化が遅い動画は、間延びした印象を与えてしまいます。

基本は同じ画面が3秒以上つづかないように編集し、テンポよく展開します。実際のシーン切り替えについて、エネクラウドさんの動画を例に見てみましょう。

24秒の動画は、上の8つのシーンから構成されています。単純計算で1シーンは3秒程度ですが、それぞれのシーンで見せたい情報量、秒数は異なります。

特に2つ目の「Bentoレイアウト動画」は最長の5秒です。「5秒でも少し長いかな…」と編集中に不安がありましたが、実績の主役であるスクロール動画があること、4つのカットすべてが動画で情報量が多いこと、次の展開の伏線になるフレームがあることから、5秒でもOKとしました。

恥ずかしながら、エネクラウドさん以前の動画では、「1シーン、3秒以内」ルールを守れていませんでした。なんとなく間延びしている印象を抱きながらも、編集でカットする決断ができていませんでした。がんばって作ったサイトを、できるだけ長く見せたい。そんな気持ちが残っていました。

しかし、退屈さを感じて離脱されてしまえば、本末転倒です。

いまでは「なんとなくわかった!でも1回では理解が追いつかない」くらいの情報量とスピード感を意識しています。一度で理解できなくても、興味を持ってくれたひとはリピート再生してくれるはずです。

3. 流れるようにストーリーを展開する

情報量の多い動画を作るには、短時間のシーンを多く取り入れる必要があるとお伝えしました。

ここで注意したいのは、ぶつ切りの短い動画がつながっている状態にしないことです。動画内でストーリーをつくり、リズムよく展開することで、「あっというま」に終わる動画を作成できます。

ここではマンガワンさんのアプリ実績動画を例に、実際のストーリー構成を紹介します。マンガワンさんの24秒の動画は、次の10シーンからできています。

構成とデザインを考える段階では、同じ画面が続かないよう「視覚的なリズム」をつくっています。素材の案出しはデザインチームと相談して進めます。同時に、どのシーンをどこで、どのように使うか、構成の組み立てを行います。

見た目の異なる複数の画面を、バトンが次から次へとわたるように、なめらかにつないでく。これが動画づくりのおもしろいところであり、むずかしいところでもあります。うまくいくと、魅力的で最後まで見られる動画になります。

また、退屈しない動画を作るためには、「複数の感情」を体験できるストーリー構成も有効です。

先述した10のシーンのなかでは、異なる7つの感情や印象を抱ける構成にしています。

  1. 全体像がわかる「にぎやか」なシーン
  2. アプリの「らしさ」を伝えるシーン
  3. 素材ごとに見せる「かわいい」シーン
  4. 画面展開が「楽しい」カラフルなシーン
  5. しっとり見せる「エモい」シーン
  6. キャラクターが勢揃いの「かっこいい」シーン
  7. 物語の終わりを伝えるエンディング

見せたい部分を前半に置きながらも、「楽しい」「かわいい」「エモい」「かっこいい」など、感情の波を起こせるような構成です。

お祭りムードで盛り上がったあとは、しっとりエモく落ち着かせる。かわいいと思ったら、かっこいい。感情の振り幅が大きいほど満足感は大きくなり、印象に残りやすい動画になります。

4. 画質にこだわる

画質は動画のクオリティに関わる重要な要素です。画質が悪いと、いくら構成や動きが素晴らしくても、完成度が低く感じられます。素材づくりの段階から「高解像度」を意識することが大切です。

また、編集によって素材を「拡大」する場面もあります。拡大は画質不足を感じさせる原因のひとつになります。あらかじめ大きめの素材を用意しておくこと、動きの表現によって対処することが必要です。

5. 不要なものをカットする

動画のクオリティを高めるためには、客観的な視点が必要です。編集者には、伝えたいことを伝えるため「不要なもの」を見極め、カットする力が求められます。

  • このシーンは本当に必要か?
  • このデザインが最適か?トリミングは不要か?
  • この間はカットできないか?(0.1秒単位で精査)
  • 動画編集者のエゴが入っていないか?

使用する素材、シーンの選定には、いつも頭を悩ませます。プロジェクト進行中、みんながどれだけがんばっていたかを見ているため、「ここは見せてあげたい」「これも見せたい」とすべて詰め込みたくなります。

でも、それが正解とは限りません。むしろ逆効果の場合もあります。きちんと伝わる動画をつくるために、デザイナーやエンジニア、ときにお客さまの気持ちをくみ取りながら、適切な素材・シーンの選定が必要です。

また、「動画編集者のエゴ」には特に注意しています。動画の編集作業には、多くの手間がかかります。作業スピードが上がっても、ある程度のフォーマットができても、素材の準備から動きの編集、自然で気持ちいい表現の調整など、やっぱり工数はかかります。正直、とてもめんどくさいです。

めんどくさいですが、サボっていい理由にはなりません。「ここ動かしてるよ!」と透けて見える、余計な主張のある動画を作っていい理由にもなりません。がんばったかどうかは、成果物で語るべきです。

動画編集者のエゴを捨てる。勇気を持ってカットする。自分にも後輩にも唱え続けていきたいです。

現在の課題と、これからのこと

苦しくも楽しい実績動画づくりは、今後も担当していきたいです。同時に、クリアしたい課題もあります。それは「クオリティ」と「リソース」の問題です。

動画のクオリティをもっと上げたい

実績の動画をつくるたびに、社内のメンバーからは「ふゆなさん腕あげましたね〜!」「どんどん上手くなってる!」とポジティブな言葉をもらえます。お客さまにもよろこんでいただけることが多く、とってもうれしいです。

その反面、申し訳ない気持ちもあります。クオリティが追いついていないからです。どの動画も自分のベストを尽くし、前回よりいいものをつくる意識で挑んでいますが、どうしても知識、技術、アイデア、すべて足りていません。悔しいです。

来年さらに効果的な動画をつくれるよう、まずは冬休みにひとり修行します。ありがたいことに冬休みが2週間以上あるので、モーション関連の書籍を参考に、いろいろ作ってみる予定です。

リソース問題を解決したい

現状、ひとつの実績動画を作るのに、1人日ほどかかっています。制作時間は知識・技術の向上によって多少圧縮できますが、プロジェクト数が増えてくると、動画の完成が実績公開のボトルネックになってしまいます。

繰り返しますが、制作会社にとって実績の発信は生命線と同じです。止まれば死ぬ、そんな気持ちでやってます。

そのうえで、このままひとりで実績動画づくりを担当することに、限界を感じています。なにかの事情で、長期間お休みが必要になったら?クライアントワークに注力するあまり、実績更新に手が回らなくなったら?そんなもしものときのために、来年は自分のレベルアップと並行して、制作フローの改善、制作担当者の増員を目標にしたいです。

実績動画づくりは、未来への投資

今年つくった実績動画と知見のまとめでした。振り返ってみると、一歩ずつではあるものの、成長している様子が見えて安心しました。次の課題も整理できました。

「動画がショボくてプロジェクトの魅力を伝えられなかったらどうしよう」「ダサい動画を作ったら終わりだ」「neccoが、お客さんが、ダサいと思われないようにベストを尽くそう」

きっとこの気持ちは、一生なくならないでしょう。それでいいです。デザインも動画づくりもディレクションも、本気でやっていれば楽しい、苦しい、うれしいがセットです。そのなかでも、できなかったことができたときのうれしさ、neccoのみんなやお客さまがよろこんでくれる姿、その印象が強いから、挑み続けられます。

実績動画づくりは未来への投資です。今後は自分のレベルアップと並行して、ほかのメンバーの成長も助けられる動きをしていきたいです。

作れる人が増えたときは、「ふゆなさんに作ってほしい!」と指名されたい!負けたくない気持ちもあります。これから強くなるメンバーと切磋琢磨するためにも、neccoやお客さまの事業をさらに加速し、拡大せるためにも、常にベストを尽くしていきたいです。


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(2024年11月時点)

田口 冬菜

田口 冬菜

Fuyuna Taguchi

三重県伊勢市生まれ。地元の二次救急病院で約6年間理学療法士として約6年働き、趣味ではじめたデザインにハマってデザイナーへ転職。転職のタイミングでより成長できる環境を求めて東京に引っ越し。都内のデザイン会社1社を経て、2020年からneccoに入社した。入社後にはモーションデザインのスキルを身につけ、現在デザイナー・モーションデザイナーとして働いている。個人ではブログを書いたり、たまに動画・映像関連のメディア出演をしたりしている。著書に『これからはじめるFigma WebUIデザイン入門』(マイナビ出版、2022)がある。インテリア、本、コーヒー、あまいもの、散歩、人の姿勢・動作観察が好き。

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