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紙やウェブだけじゃない、これからの「編集」の考えかた
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編集って、どんな仕事なんだろう。
世の中に「編集者」という職業の人は数多くいます。
編集者の名前が表に出ることが少ないため認知度は低いですが、雑誌や本、フリーペーパー、オウンドメディア、まとめサイトなど、それぞれに必ず編集者が存在しているはずです。
しかし、編集者という肩書きをもつ人たちが皆同じような仕事をしているかといえば、そうとも限りません。
そんなわたしも、neccoでは「編集者(エディター)」という肩書きをもっています。
初対面の人からは、「どんな仕事なんですか?」とよく聞かれますが、「冊子や広告などの構成を考えて、取材して文章書いて…。サイトの場合だと情報設計やワイヤー作成もします。あとは広報的なこともしてますよ。まぁ、なんでも屋さんですね」と、あいまいな説明をしてしまうのです。
相手はきっと、わかったようなわからないような、変な気持ちになっていることでしょう。
ではいったい、編集とは何なんでしょうか。
表面からは見えにくいけれど、裏でせっせと動いている編集者の仕事について、考えてみました。
光らせたい情報を見つけ、ことばやデザインなどの力で輝かせて発信する。
いま言ったとおり
「外からは見えにくいけれど、裏でせっせと動いている」
のが編集です。
世間一般から認識されている「編集者」のイメージって、本や雑誌を作るときに出版社や編集プロダクションなどにいる「原稿を校正してまとめてくれる人」ですよね。
原稿校正だけでなく、ライティングやコンテンツづくり、メディア運営なども編集者が担当しています。
編集者でありながらライターと広報を兼任している人も多いのではないでしょうか。
わたしも、就職したてのころはそっちの意味での編集者でした。
とある広告代理店の企画制作部に所属し、週刊フリーペーパーの編集・ライティングの仕事をしていたのです。
企画案を出して、台割をつくって、構成を考えて、取材に行って、文章を書いて、校正をして、原稿をとりまとめて、印刷会社に入稿する。そこまでが編集者としてのわたしの役割でした。
入稿データをMOディスクにまとめて、宅配便や新幹線便を使って印刷会社に送るんです。ネガやポジも扱ってました。なつかしい。もう15年以上前のことです。いまはすべてデータ化して、ネットで一瞬ですからね。
そのころはまだ紙媒体が主流の時代。ウェブの仕事に携わることはほとんどありませんでした。
そして時が経ち、いまでも編集の仕事を続けていますが、業務内容はだいぶ変わりました。
実際の業務をあげてみると
・ウェブサイト制作
情報設計、サイトマップ作成、ワイヤー作成、キャッチコピー作成、文章作成、ディレクション
・グラフィック系の制作物
構成、台割作成、ラフ作成、キャッチコピー作成、文章作成、ディレクション
・その他
企画立案、インタビュー取材、写真撮影、自社広報
などです。わたしの場合は趣味で写真をやっていたこともあり、neccoでは撮影も担当しています。
ウェブの時代になってからは、業務が多彩になりました。これはおそらくデザイナーやディレクターも同様ですよね。紙とウェブでは、まったく異なる視点で構成や情報設計、デザインをしていく必要がありますから。
業務範囲が広がり、編集者はただ忙しくなっただけ?一見そうかもしれませんが実は違います。バラバラに見える作業内容ですが、そのなかには共通点があるのです。
編集の役割
①多くの情報のなかから、光らせたい情報を見つける。
②光を当てるためのアイデアを考える。
③さまざまな表現方法(文章、デザイン、写真など)で輝かせて外へ出す。
これはウェブや紙に限ったことではありません。地域や企業を盛り上げるために、光らせたい人やモノを見つけて、言葉やデザインの力を駆使して発信する。これも立派な「編集」です。
経営者とともに、企業を編集する時代へ。
そしてこれからは、編集者が「企業や経営者を編集する時代」になっていくと考えています。
企業や経営者の見せ方を、編集者がともに考えコントロールするのです。
この話に関しては、尊敬する編集者・塩谷舞さん(@ciotan)がすばらしい記事を書かれていますので、一読ください。
塩谷さんの記事を読んで、ひとつ思い出したことがあります。
過去に勤めていた会社で、もしかしたら塩谷さんが言うCSOと少しだけ似たようなことをしていたかもしれない、と。
東日本大震災直後のことです。
10年ほど勤めた広告代理店を辞め、仙台の住宅会社で広報の仕事をしていました。
その住宅会社は、創業間もない小さな企業にもかかわらず広報部があり、積極的に情報発信していました。
具体的には以下のような媒体になります。
・コーポレートサイト
・広告(主にフリーペーパー)
・プレスリリース
・住宅雑誌
・SNS
・冊子(会社案内や実績紹介)
・社外報
広報や制作の部署をもたない企業では、こういった制作物の編集やライティングをそれぞれ別のスタッフが担当したり、外部の編集者やライターに依頼することが多いでしょう。しかし、わたしはこれらすべての編集・ライティングを担当していました。ここが他の企業との違いだと思います。
企業として芯の通った発信をするため、創業者(社長)にくっついて歩き、言葉ひとつひとつを聞き逃さないよう心がけました。
社長だけではありません。設計者やコーディネーターなど、他のスタッフとも積極的にコミュニケーションをとり、仕事に対する姿勢、お客さまへの思いなどを聞き取りました。
お客さま(家を建てたオーナーさん)からも、ウチの会社を選んだ理由や家を建てた感想、スタッフから受ける印象などさまざまな話を聞き、第三者の目からみた自社の印象をリサーチしました。
自社を俯瞰しながらも、多角的な視点でことばをつむぎ、ストーリーとして発信しました。一般の人にはわからないような建築の専門用語は使わず、かみ砕いて説明するようにしました。
入社後すぐに広報部に配属され、自社のこともよくわからず建築の知識もほとんどない、まっさらな状態だったのがよかったのかもしれません。
その結果、確実にファンが増えたなと実感しています。家づくりをはじめるときって、数ある住宅会社のなかから悩んで悩んで一社に決める、そんなイメージがありますよね。そうではなく、「記事や広告を見て、◯◯会社さんにお願いしようと決めました」と言ってくださるお客さまが多かったのです。
ファンが増えた要因は、もうひとつあります。
それは、経営者やスタッフそれぞれが、自社ブログで情報発信をしていたこと。
ブログは発信者の個性を表現する場なので、ファンがつきやすいという利点があります。
さらに、企業が一本筋のとおったストーリー性のある発信をおこなうと、それは社外だけでなく社内にも浸透します。企業文化や価値観を理解したスタッフひとりひとりが、自然と「会社の見せ方はこうであるべき」と理解し、ブレることなく個人発信ができるようになります。つまり、インナーブランディングに成功していたのです。
当時はただただ業務を遂行することに精一杯で、ここまで深くは考えていなかったのですが…今になって「これは企業のブランディングとして大変有効な方法だったなぁ」と感じています。
塩谷さんは記事のなかで、こう綴っています。
私の思うCSO像は、まず経営者の一番の相談相手であること。そして経営者の「属人性」という不自由さを溶かしていき、彼ら彼女らの精神的負担を楽にするような、カウンセラーのような役割でもあると思っています。
わたしはカウンセラーのようなCSOにはなれませんでしたが、編集者としてたくさんのことを学ばせていただきました。
もうひとり、尊敬する編集者の竹村さん(@tshun423)はこんなことを言っています。
ぼくは今後、経営者に編集者がつく時代が来るんじゃないかと思ってる。顧問弁護士、顧問税理士みたいな感じで、顧問編集者がつく。仕事は広報に似ると思うけど、決定的に違うのが「社外の目」であるところ。情報を発信する側ではなく、受け取る側から見てディレクションできる存在が必要になると思う。
— 竹村俊助 | 株式会社WORDS代表 (@tshun423) June 24, 2019
こんな時代が、近いうちに本当にやってきそうな気がしています。
わたしはまだまだ塩谷さんや竹村さんのような立派な編集者にはなれていません。
住宅会社でやってきたことも偶然性が高く、不確かなことが多いです。
でも、この考え方をneccoでも活かし、企業や経営者に必要とされる編集者になっていけたらいいなと思っています。
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(2024年9月時点)
夏井 ひとみ
Hitomi Natsui
宮城県生まれ。 大学卒業後、仙台の広告代理店にて週刊フリーペーパーの取材・編集・ライティング、企業のイベント企画・プロモーション提案などに従事。その後、住宅会社の広報スタッフを経て2014年に秋田県へ。ウェブサイト、パンフレット、商品パッケージデザインなど、さまざまな制作物におけるディレクション・編集・取材・ライティングを幅広く経験。 2017年よりneccoに参画。好きなものはガンダム、花、鳥、写真、歌うこと。似ているキャラクターはニコロビン、メーテル、エボシ御前。こけしにも似ている。