今 佑輝
今 佑輝

necco Note

neccoでの映像制作で初めて照明機材を導入!照明を利用して学んだこと

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アシスタントフォトグラファー・ビデオグラファーの今です。

アドベントカレンダー9日目のこの記事では、neccoの映像制作で初めて照明機材を導入して利用し、学んだことや失敗談をまとめました。

neccoではこれまで、ほぼ自然光とレフ板を活用して映像撮影をしていました。

株式会社Awarefyさまからブランドリニューアルのご依頼をいただき、そのプロジェクトの中でPR動画を作成しました。プロジェクト内容の詳細は、neccoの実績ページをぜひご覧ください。

照明機材をうまく使えるように、ライティング(被写体に当たる照明をコントロールする技法)について学び、実際にその撮影現場で利用し始めました。

スタジオでのAwarefyさまのPR動画の撮影記録をベースに、照明を利用して学んだことについてお話したいと思います。

ぜひお読みいただけたら嬉しいです!

実際に撮影して完成したAwarefyさまの動画について

毎日に寄りそい、気づきを増やすAIメンタルパートナー「Awarefy」ブランドコンセプトムービー|制作実績

今回、撮影して完成した動画はYouTubeで公開されていますので、ぜひご覧ください。

この動画は、Awarefyさまの運用するアプリケーションのプロモーション動画になっています。動画の中では、アプリケーションを利用するモデルさんとAwarefyさまのコーポレートキャラクターである「ファイさん」が登場します。

今回の撮影するシーンは夜のシーンがあり、背景が暗くなってしまうため、モデルさんが暗く映らないように照明を利用しました。

こちらの動画は、企画から脚本、撮影、照明、編集、音楽までneccoで制作をしました。

動画の6シーンの資料とライティングについて

ここからは、動画の6つのシーンについて撮影時に準備した資料とライティングについて詳しく書いていきます。

はじめに撮影して完成した動画、そのシーンで利用した資料、シナリオの解説、ライティングの順でまとめていきます。

1. 主人公(主演のモデルさん)が仕事から帰宅するシーン

このシーンは、主人公が仕事終わりに帰宅してソファに腰掛けるシーンです。腰掛ける前に照明を点けてソファに座る流れになっています。この時に動画に映っているとおり、左奥のスタンドライト、右手前のテーブルライトがあり、フレーム内には入っていませんが、カメラの左後方と、右奥の植物に照明を2つあてています。

「1. 主人公(主演のモデルさん)が仕事から帰宅するシーン」の撮影用の資料

この資料にある通り、カメラの左手からモデルさんに照明をあてているものと、机の右手にあるライトをフレーム右奥の植物に当てています。

この資料は、Figmaで企画や脚本を担当した阿部さんや夏井さん、長野さんが作成し、デザイナーメンバーにデザインを整えてもらいました。スタジオの図面や機材の配置、テスト撮影したカットを掲載しています。

「1. 主人公(主演のモデルさん)が仕事から帰宅するシーン」撮影中の様子

モデルさんが帰宅し、ソファに腰掛ける前の様子です。この撮影開始のあとに、歩き出してソファに腰掛ける流れになります。

このカットは、以下のような流れになっています。

  1. ドアを閉める音を出す(デザイナーの今さん)
  2. 靴を脱いだときの音を出す(デザイナーの龍神さん)
  3. 手前と奥のスタンドライト、一番奥の床に置いたライトを点ける(自分)
  4. テーブルの上のランプを点ける(アシスタントディレクターの國原さん)

「3と4は、ほぼ同時に点ける」「3はアプリのボタンを2つ連打+物理ボタンを押す」

この一連の流れを撮影しています。動画を見ると、カメラの左手と右奥に照明があるのがわかると思います。

このシーンでは、上記の一連の流れを1カットで撮影する必要があり、各メンバーが同時に動く必要があったので、何度も撮影をやり直しました。

夜のシーンであったため、照明の照度を強くしすぎると陰影がなくなってしまうため、照度コントロールが難しかったです。

2. スマホでアプリを操作しているシーン(ソファ右側からの画角)

このシーンは、ソファに座っている主人公がスマートフォンを操作して、ファイさんが主人公を見てにっこり微笑むシーンです。画面の左奥にスタンドライトがあり、右手前にはフレームアウトしているテーブルライトがあります。カメラの右後ろからモデルさんの顔にも照明を当てています。

「2. スマホでアプリを操作しているシーン(ソファ右側からの画角)」の撮影用の資料

この資料にある通り、カメラの右後ろの高い位置からモデルさんの顔に向けて照明を当てています。

背景は暗いままモデルさんの顔が明るくなるように照明を当てるのが大変でした。

3. スマホでアプリを操作しているシーン(モデルさん肩越しの画角)

このシーンは、シーン2をモデルさんの肩越しから撮影したシーンです。シーン2と同じライティングですが、モデルさんの後ろから撮影するためのスペースを確保するために、ソファや照明の配置をすこし移動させています。

「3. スマホでアプリを操作しているシーン(モデルさん肩越しの画角)」の撮影用の資料

この資料の右下の写真にある通り、カメラマンが入れるくらいのスペースを確保するためにソファや照明の配置をすこし移動させています。

「3. スマホでアプリを操作しているシーン(モデルさん肩越しの画角)」の撮影の様子

撮影する前にライティングの準備をしている様子です。練習の時よりも写真奥の窓からの自然光が強く、映像の雰囲気が変わってしまいました。なので、スタジオから黒い板(カポックと呼ばれるそうです)をお借りして、窓からの光を抑えました。

4. ヘッドホンを取る・瞑想をするシーン

このシーンは、主人公がヘッドホンを取って、ファイさんと一緒に瞑想をするシーンです。画面左奥にスタンドライト、右手前にテーブルライトがあります。カメラの左後ろ側からもモデルさんの顔に照明を当てています。

「4. ヘッドホンを取る・瞑想をするシーン」の撮影用の資料

この資料ではカメラの右後ろからモデルさんに照明を当てていますが、本番ではカメラの左側に変更しています。また使う照明も、大きいものから小さいものに変更しました。

「4. ヘッドホンを取る・瞑想をするシーン」の撮影の様子(1)

ヘッドホンを取るシーンを撮影している様子です。全体的に映像が暗くなってしまうので、照明をカメラ後ろに近づけてヘッドホンの曲線が綺麗に反射するように調整するのが大変でした。

「4. ヘッドホンを取る・瞑想をするシーン」の撮影の様子(2)

このシーンの撮影直前に、照明や流れの確認をしている様子です。照明にソフトボックス(照明の当たる範囲を調節し、光を柔らかくするもの)をつけると、モデルさんの顔だけ明るくするのが難しく、背景も一緒に明るくなってしまったので、外して撮影をしました。それでも光が当たる範囲が広かったので、手元にあったハンカチなどを照明にあてがって対応しました。

顔のみに照明を当てることができたのですが、あるハプニングを起こしてしまいました。そのことについてはこの後お話します!

5. 会議室でミーティングをしているシーン

このシーンは、主人公が会社の会議室で会社のメンバーとミーティングをしているシーンです。カメラの右後ろにフレームアウトした照明、カメラの正面上部にフレームアウトした会議室のダウンライトがあります。

「5. 会議室でミーティングをしているシーン」の撮影用の資料

この資料にある通り、カメラの右後ろの少し高めの位置からモデルさんに向けて照明をあてています。

「5. 会議室でミーティングをしているシーン」の撮影の様子(1)
「5. 会議室でミーティングをしているシーン」の撮影の様子(2)

このシーンの撮影の様子です。背景の大きな窓からの自然光が強く、モデルさんに当てる照明の照度コントロールが難しかったです。照度を上げすぎると陰影がなくなって、画面全体がのっぺりした映りになってしまうので、調整が大変でした。

6. 一人で仕事をしているシーン

このシーンは、主人公がPC作業をしているシーンです。主人公とファイさんが目を合わせて微笑むところが心温まります。練習では、モデルさんが後ろを振り向く動きがあり、その時にモデルさんの顔が明るく映るようにカメラの左側から照明を当てていました。本番では、顔を正面に上げる動きが採用されたので、照明は点けませんでした。

「6. 一人で仕事をしているシーン」の撮影資料

この資料にある通り、練習ではカメラの左側、モデルさんの少し高めの位置から照明を当てています。モデルさんが後ろに振り向く動きがあり、振り向いたときの顔を明るくするために、照明を使用していました。

「6. 一人で仕事をしているシーン」の撮影の様子(1)
「6. 一人で仕事をしているシーン」の撮影の様子(2)

このシーンの撮影の様子です。画面右側からの自然光が強く、モデルさんの顔が明るく映って、全体の光量も確保できていたと思います。モデルさんの動きも、顔を正面に上げる動きが採用されたため、照明は点けていません。天候に恵まれて良かったです!

撮影で起こったハプニング

ハプニングが起きた「4. ヘッドホンを取る・瞑想をするシーン」の撮影の様子

照明を調整しているところをすごくいい感じに撮っていただきました!

しかし、この直前にハンカチ炎上未遂事件を起こしています。急いで照明の範囲を小さくしようと、手元にあったハンカチを照明にあてがっていたら煙が!

落ち着いて耐熱性、難燃性の素材を探してから対処すべきでした。どんなに急いでいても、安全を第一に行動しなければいけなかったと反省しています。

今回の撮影でneccoが導入した照明機材と撮影機材

neccoでは、今回の撮影で以下の照明機材と撮影機材を導入しました。

照明本体2台
ソフトボックス
照明スタンド
映像撮影用のカメラ
カメラのレンズ
カメラ用モニター
今回の撮影で大活躍したMars M1の映像の転送機能
今回の撮影で大活躍したMars M1の映像の転送機能
今回の撮影で大活躍したMars M1の映像の転送機能
今回の撮影で大活躍したMars M1

撮影のライティングを事前にシミュレーション!「set.a.light 3D」

今回の撮影では、初めての照明機材を導入したため、事前に照明のシミュレーションソフトの「set.a.light 3D」を利用して照明の配置や、照度や色温度などをシミュレーションしてスタジオの撮影に備えていました。

「1. 主人公(主演のモデルさん)が仕事から帰宅するシーン」をシミュレーションした様子

「1. 主人公(主演のモデルさん)が仕事から帰宅するシーン」の照明や道具の配置をシミュレーションした際の様子です。撮影する部屋のサイズや壁の色を細かく設定できたり、使える小道具の種類もかなり多くて驚きました。

再現元の「1. 主人公(主演のモデルさん)が仕事から帰宅するシーン」

「1. 主人公(主演のモデルさん)が仕事から帰宅するシーン」の実際の撮影したカットはこちらです。シミュレーションソフトでここまで家具や照明の位置を細かく調整できるため、おすすめです。

PCの中にスタジオを!Set.a.light 3Dで撮影をシミュレーションしよう

利用方法はこちらの上記の動画を参考にしました。

ライティングを学んだ参考書籍と動画

今回の撮影をするにあたって、映像制作での照明機材の利用は初めてだったため、書籍や動画などもいくつか見て、ライティングについて学びました。下記で参考にした書籍と動画をご紹介します。

書籍

「画づくりのための光の授業 CG、アニメ、映像、イラスト創作に欠かせない、光の仕組みと使い方」では、光の基本原則からライティングの構図や演出についてまで、実際の映画のシーンとともに解説がされています。光の性質について初学者にも分かりやすく書かれていて読みやすいと思いました!

画づくりのための光の授業 CG、アニメ、映像、イラスト創作に欠かせない、光の仕組みと使い方

「映像ライティング&カラーグレーディング」では、撮影現場での美しいライティングとはどういうもので、そのアプローチはどのように行うかが解説されています。また、色補正についても一緒に解説されているので、ライティングに加えて映像編集にも役立つ一冊だと思いました!

映像ライティング&カラーグレーディング

YouTube動画

YouTubeには、映像制作会社からプロの映像制作者の方まで、たくさんの方がTips動画をアップしているので、その中でも特に学びになったものをいくつかご紹介します!

【動画ライティング】照明で動画はこんなに変わる!YouTubeやインタビュー撮影の照明テク。Nanlite FS-60B & FS-300B【Lighting techniques】/ Yuichi Ishida

上記の動画は、人物撮影の照明の基本テクニックについて解説されています。使用している照明ひとつひとつがどんんな役割をしているか、自分のような初心者にもわかるように丁寧に解説されています。それぞれの照明があるときと無いときの比較が勉強になりました!

Gloaming -before the haze- のライティングを全解剖してみた。/ bird and insect

上記の動画では、写真・映像制作会社が、自社で制作した映像作品のライティングについて解説がされています。作りたい映像のためにどのようなアプローチがされているか、どんな照明をどのように配置しているかが丁寧に解説されています。プロの現場の様子も覗けるのがありがたいです!

今回の撮影を通して学んだことと今後の課題

学んだこと

照明をうまく利用することで陰影を作り、見せたいものを明確にできる。

光源の面積が大きいと、見せたい部分をピンポイントで明るくして、それ以外の部分を暗くすることが難しいです。結果、陰影が少ないフラットな絵になり、見せたい要素がどこなのか伝わりづらくなってしまいます。

今回導入したソフトボックスだと、照らす面積が大きくなり、陰影を作ることが難しかったです。照明の技術があれば実現できていたかもしれません。

今後の課題

安全面に最大の注意を払う

今回の撮影で、ハンカチ炎上未遂事件を起こしてしまいました。気づくのが遅かったら火事になっていたかもしれません。撮影現場の機材が倒れて人が怪我をしたというニュースをよく耳にします。撮影当日に起こりそうな事故を事前に考えて、資料に目立つように記載するなどの工夫をしていきます。

何を誰に伝えたいか、なぜその光の当て方をするのかを考える

まだ、「何を誰に伝えたいから、このような照明の当て方をして、こういう効果を演出しました。」と自身を持って説明できる実力では全然ありません。もっと、世の中の名作を言われる映像作品に目を通して、なぜこの表現をしたのか、誰に届けようとしているのか、どうしたらそれを再現できるかを考える癖をつけていきます。

その後撮影した動画

今回学んだことを活かすために、「バーンドア」という照明に取り付ける道具を導入し、neccoメンバーが登壇した「#朝までFigma」の様子を撮影してみました。

バーンドアは、照明が当たる面積を自由にコントロールできる道具です。

4枚の羽根のようなものがバーンドア

実際にバーンドアを使用して撮影した動画がこちらです。

一番見せたい「人物」に光が集中して当たるようにバーンドアを利用しました。他にも、壁などの人物以外が適度に暗くなるように、オフィスのダウンライトの向きを変えました。見せたいものが明るく、それ以外のものを暗くすることで陰影のある画作りができたと思います。

まとめ

今回の撮影を通してライティングは、ただ暗かったら明るくすれば良いわけじゃなかったことを学ぶことができました。伝えたいことが伝わるようにどう演出すれば良いか、考える要素がたくさんあってとても難しい技術だと身を持って実感できました。

映画などを見る際に「え、これってどうやって照明当ててるんだろう?」「こうやってるのかな?」と少しだけ考えられるようになってきたと思います。ほんの少しです。

ライティングのことはまだまだわかってていないことが多いので、これからより良い映像を作れるようにもっと学んでいきます!


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今 佑輝

今 佑輝

Yuki Kon

秋田県生まれ。大学卒業後は地方建設会社へ入社し、工場修繕や集合住宅の改修工事の現場監督業などに従事。退職後は、オンライン古着屋の開設・運営、個人で動画編集業などを行う。2023年8月からneccoでアルバイトをはじめ、写真撮影や映像制作、デザイン、モーショングラフィックスの技術向上に勤しんでいる。好きなものは、機能的で美しいもの、ゆるキャン△、小鳥、Sigur Rós、THE NOVEMBERS。好きな食べ物は、藤花食堂のチリビーンズタコス、コーヒーが染み染みのティラミス、どら焼き、さつまいも・かぼちゃスイーツ。

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